エッセイ (食事のことなど)

 




「池波正太郎指南、食道楽の作法」佐藤隆介著(新潮社)P40−42 

わが師、池波正太郎も大変な鰻狂の一人だった。おかげで私も随分あちこちの高名な鰻屋へ連れていってもらったが、「最近の鰻屋は料理屋のまねをして、鰻の蒲焼の前に色々と出しすぎる」
と、よく怒っていた。蒲焼を本当に美味しく食べようと思ったら、蒲焼の前に何か食べちゃいけな
い。せいぜい、お新香だけで酒を飲みながらじっと待て。これが亡師の持論だった。

鬼平犯科帳シリーズの一巻---鰻の蒲焼の歴史がわかる---
「辰蔵が子供のころは、鰻なぞも丸焼きにしたやつへ山椒味噌をぬったり豆油をつけたりして食べさせたもので、江戸市中でも、ごく下等な食物とされていたものだ。---それが近年、鰻を丸のままでなく、背開きにして食べよいように切ったのへ串を打ち、これを蒸銅壺にならべて蒸し、あぶらをぬいてやわらかくしたのを今度はタレをつけて焼きあげるという、手のこんだ料理になった。---
鰻というものが、こんなにおいしいものとは知らなかった---いったん口にすると、後をひいてたまらなくなる。

などと、作中人物に語らせております。



いちかわ  (北九州市戸畑区新池   

 もう彼是30年近く前のことですが、当時勤務しておりました北九州市戸畑新池の税理士事務所の近くにあった鰻屋さんが「いちかわ」でした。昼の定食が1,000円程度で食べられ、給料日のたびにかよったものです。
たいへん良心的で雰囲気の良い店でした。
焼きあがったうなぎは、ふっくらと柔らかく、たれもあっさりとしてしつこくなく、丁度良い塩梅でした。
先日久しぶりに寄らせていただきました。
接客も良く、うなぎも昔と変わらぬおいしさでした。

<私の中のランク>

優良です。

 

 

吉塚うなぎ  (福岡市中央区西中州)  

 

ここのうな重をはじめて食べた時も感動ものでした。
いずれも関西風の焼き方と思われますが、上記「いちかわ」とは違った焼き加減で、よく焼かれたうなぎに甘めのたれがなじんで、大変おいしいものです。
ただ、うな丼はご飯に甘めのたれがかかり過ぎで、ちょっと敬遠される方もいるかも知れません。

<私の中のランク>

優良です。




北大路魯山人 「春夏秋冬 料理王国」 p134鰻の話  

「養殖鰻でも良い餌をたべている時はうまいし、天然の鰻でも彼らの好む餌にありつけなかった時は、必ずしもうまいとは言えず、要は餌次第である。天然に越したことはないが、養殖の場合でも、それに近いものが望まれる。」
「東京では5,6軒だけ天然鰻を使用しているが、京、大阪は皆無、中には両方まぜて食わせる店もある。」
「およそ暑さとは対照的な1月寒中の頃のうなぎが、最高の美味である。」
「鰻の焼き方であるが、地方の直焼、東京の蒸焼、これは1も2もなく東京の蒸焼が良い。」

これは魯山人先生が昭和30年代頃に書かれた話の抜粋です。
九州では関西風の直焼がほとんどの様であるが、店によっては焼き方を工夫し蒸焼に近い味をだしている。
でないと、客も馬鹿ではないから、繁盛しないでしょう。












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